極夜、瞳のおくで
たりぽん(大理 奔)

いつしか、
風のように地面を忘れてしまう
飛ぶでもなく、舞うでもなく
深海のようではなく墜落する
白夜の季節、朝焼けと夕焼け
始まりも終わりもない不安な砂時計
いつでも途中であきらめてしまう
日記の日々、だったか

深海の息苦しさから逃れたければ
クジラのように舞え
鳥のように飛べないのなら
海月のように沈んでいけ
いつか雪のように降り積もる
それだけのために

  獣のための大地では
  器用に生きていけない
  恐怖を埋めてうずめて隠す
  雪の下にコンクリを敷き詰め
  バラスの下に砂をまき

海に捨てられる雪のように
沈黙の真昼に溶けてゆきたい
鶴のように折りたたまれ
(飛ぶでもなく)
哀愁で色づき散っていく
(舞うでもなく)
傷付けない偽りのように
ひらがなでただよって

やさしい、それでは忘れてしまう
風のように、かぜのように
どこにでもあり、どこにもない
それは白夜の夜更け

夜に目を覚ませば、世界は
いつでも終わることができる




自由詩 極夜、瞳のおくで Copyright たりぽん(大理 奔) 2009-01-18 00:20:47
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