私の夢
光井 新

 私は毎晩お花畑の夢を見ます。その事をパパとママに話したら、パパがお庭に花壇を作ってくれました、ママがお花の育て方を教えてくれました、私がお花を育てる事になりました。
 何日か経って、私の知らない草が何時の間にか生えてきました。草がいっぱい増えたので私は嬉しかったけど、ママが「これは雑草だから」と言って引っこ抜いてしまいました。可哀想になって泣いてしまった私に、ママは教えてくれました。雑草を引っこ抜かないとお花が枯れてしまうそうです、お花の為にママは心を鬼にしているそうです。
 私の花壇には色んな虫さん達も沢山やって来ます。小さなお客さんの賑わいが私は楽しかったけど、パパがお薬を撒いてみんな殺してしまいました。怖くなって泣いてしまった私に、パパは教えてくれました。虫さん達を殺さないとお花が枯れてしまうそうです、お花の為にパパは心を鬼にしているそうです。

 泣き虫な私は心を鬼にできなくて、お花を育てるのを止めてしまいました。
 暇になった私は、ヤンキーの大きなお友達と一緒に、万引きのスリルを味わう事にしました。だけどママがやって来て、お友達の事をひっぱたいて追い払ってしまいました。
 寂しくなった私は、お金をくれる知らないおじさんと、気持ち良い事をしようとしました。だけどパパがやって来て、おじさんの事を虫ケラのように蹴とばしてしまいました。

 お家に連れ戻された私は、パパとママに怒られました。鬼のように怒るパパとママの目には、涙が溢れていました。気が付くと私の目にも涙が溢れました、反省してパパとママの顔を見ていられなくなり下を向くと、その涙はこぼれました。
 私はずっと泣いていました。寝る時も泣いていました。泣きながら眠っていたら、夢の中のお花畑に妖精さんが出てきて言いました。私の為にパパとママは心を鬼にしているそうです。それを聞いて、私は夢の中でも泣いてしまいました。

 次の日の朝、全てを理解した私はもう泣き止んでいました。親切な妖精さんのおかげです。私は妖精さんにもう一度会ってお礼を言いたかったけど、その日の夜も次の日の夜も、私の夢の中に妖精さんは出てきてくれませんでした。
 私は夢の中で妖精さんに会う事を諦めて、もう一度お花を育てる事にしました。私の花壇に綺麗なお花が咲けば、そこに妖精さんが来てくれるような気がしたからです。
 鬼の娘という自分の運命を受け入れて。お花の為に私は心を鬼にしました。
 鬼の花壇に綺麗なお花が咲きました。だけど結局、妖精さんは来ませんでした。
 がっかりしたその日の夜に夢の中で、引っこ抜いた雑草や殺した虫さん達に言われました。鬼には妖精さんの姿が見えないそうです。私は悲しくなったけど、何故だか涙は出ませんでした。

 新しい朝、私がちゃんと鬼に生まれ変わったような朝。前よりもずっと仲良しになったパパとママに「おはよう」って言った時、大好きなパパとママに毎日会えるから、もう妖精さんには会えなくてもいいやと思いました。
 夢から覚めても、お庭の花壇を見れば綺麗なお花が咲いていて、このお花が私の夢になりました。お花の為に、大切な物の為に、私も、パパとママみたいな立派な鬼になりたいと思います。


自由詩 私の夢 Copyright 光井 新 2009-01-15 14:44:48
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