六角の箱庭
RT


私たちには
自由がないから
私たちはそれぞれ
素敵なものを提出しあい
小さな箱庭を
作った

透き通る石や
カラフルな千代紙や
マフラーからほどけた
大好きな色の毛糸や
私たちは少しずつ
大切に、丁寧に
集めた

箱庭の面積は
手のひらよりも狭い
だけどそこは
私たちにとって
無限の世界だった

大切なもので溢れる
小さな庭は
六角形
高くそびえる塀は
鏡で出来ている
私たちは箱庭を筒に入れ
空にそっと、蓋をして
小さな覗き穴から
ときどき覗く

白いカーテン越しの
陽の光を
箱庭の底に向けながら
くるくると回す
二度と同じ風景にならない
それは幸福なことだった
永遠なんて言葉は
私たちには冷たかった

水色の錠剤が、あなた
オレンジの錠剤が、わたし
箱庭を回すたびに
くっついたり、離れたり
はしゃぎすぎると
看護師さんに叱られた

お互いの見た風景は知れない
それでも私たち
同じ庭でいつも
遊んでいたね






自由詩 六角の箱庭 Copyright RT 2009-01-13 22:21:32
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