夜ちゃん
小川 葉

 
夜ちゃんと
手をつないで歩いていた
夜ちゃんは
口を大きくあけたまま
何か話しかけるけど
その口は月なので
僕はその光をからだじゅうに
浴びている

夜ちゃんが
きゅうに無口になる
夜ちゃんは
結婚するんだと
さみしく光る
空を見上げると
月が雲にかくれている

おめでとう
よかったじゃない
言いかけて
夜ちゃんはもういない
空はすっかり雲におおわれ
雪が降ってきた

雪の路を
ひとりで歩く
さっきまで握っていた
夜ちゃんの
手のぬくもりを
握りしめて
もう明るくなりはじめた
空に向かって

朝はいつも
そのようにやって来る
僕はまた
夜ちゃんのことを
思い出している
 


自由詩 夜ちゃん Copyright 小川 葉 2009-01-11 15:44:26
notebook Home 戻る