美しき日々
石畑由紀子
あまりに懇願されるので
試しに小指を与えてみた
男は急いで口に運び
コクリと飲み込むと
生あたたかい求愛がわたしに届く
唾液に光った男の喉をうっとりと通りぬける
わたしの小指
満たされるはずなどなかった
男は次を欲しがって
わたしは断る理由を失くした
そのとき すでに音を立てて
部屋ごと垂直に転落しているのを
男もわたしも気づかずにいた
自由詩
美しき日々
Copyright
石畑由紀子
2004-08-12 21:02:41