残響業績
フミタケ
階段を振り返ると
目が合った
幼い頃からの呪いを秘めた寂しそうな瞳
だからその娘と友達になったんだ
快活さの嘘と
淡白を装う情熱で
それでも最後には彼女の選んだ通りになるよ
その娘のにだけ聞こえる音楽の振動だけが僕に伝わる頃には
木枯らしが公園の軸をなぞり
派手なニット帽の老人がゴミ箱で円を描く
公団住宅の窓という窓からコンドームが投げ捨てられて
ハルキストにはうんざりだと駆け込む井の頭線
ここでは誰もが何もかもが
何年も変わらない永遠の瞬間のような今に
肘と肘をこすり合わせて
歪んでいくかさもなくばツルツルしていくか
今が緩急の見分けもつかず
携帯電話のディスプレイを覗く姿には美学がないから
それを許されるのはすべての女性だけ
行ってしまう途上で行ってしまいたくなる
恋の最中に恋を渇望する
言葉は
甘い言葉は
やり直したら嘘に変わる
体と肌でトーク
そしてイク とうくまで
そこには嘘はないね
錯覚も正直な
目と目で舐め合う事からはじめて
体と肌でトーク
そしてイク とうくまで
目と目ですれ違う事からはじめて
朝まで唇あわせて眠っていたのに歯ブラシがくっついているのは嫌がるんだ
いつも関係は△かもっと多い○
あの子の秘密は湖みたいで溺れそうだから触れないよ
ずっとずっと秘境でいてくれよ
14歳の少年が13歳の女の子をうしろに乗っけて
ノーヘルで夜を走ってる
リスのような目をしてあの街の向こうのカーニヴァルを探して
無灯の盗んだバイクを転がしてる
行き着くのは失望か欲望か
動物的な笑顔の喪失なのか
ボーリング場の巨大なコーンだけが夜の闇に浮かび上がり
孤立した郵便ポストだけが寒々しいわけではなく
僕にはもう
カーニバルの予感がしんで
あるのは卑猥なウネリばかり
スキンシップ問題と猫アレルギー対策に興じるんだ
僕を鬼だと罵る女の子たちの嬌声がクッキーの匂いを絡ませて
非常階段に反響し、
「いけない事かい?」って指を絡めた思い出だけで惨めに死んでいけるよ
ケーキみたいに積み上げられた読みかけの本に消耗し慰め合いたい
残響業績
寝静まった夜の
残響業績
昨日のヘッドラインにみんな注意力散漫
残響業績
あの子はきっと夢の中で愛を放って
残響業績
深夜2時にスライドしていく天体
残響業績