ミッシング
松本 卓也

駅から宿に向かう道の両脇に
悪趣味な電飾に彩られた街路樹が
等間隔に我が身を嘆いていた

不自然に丈の短いスカートを履く
太い足の女達と何度すれ違っても
何を誘っているのか分かりやしない

やり場のない目を伏せると
雀が仰向けに落ちていて
小刻みに震えているけれど

そ知らぬ顔で目的地に向かう
自らの薄情さを嘆いてみるだけの
いやらしい余裕に苦笑い

こんなにも寒々しかっただろうか

ほんの何年か前まで
夢や愛を歌う群像の一人として
佇んでいた橋の上は
排気ガスとエンジン音
途切れる事無く続くばかりで
懐かしい酔っ払いの怒号も聞こえやしない

冷めていく心に呼応して
腹の底から痛みがこみ上げる
また一つ帰る場所を無くした
そんな手土産を抱えた現実が
たまらなくおかしくて

笑うに笑えないまま
誰をも映さないように
溜息をこぼさないように

決して振り向かないように


自由詩 ミッシング Copyright 松本 卓也 2009-01-02 00:26:28
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