シュウカツ
アヴィ

黒髪にいたしまして
お母さま喜びまして
スーツを一着揃えまして
デキル私になりきりまして

シュウカツカツカツ
ハイヒールと
シュウカツカツカツ
ペンの音

順風満帆だった漕ぎ出しも
岩場にさしかかってどん詰り
そこでくだされたクエスチョンは

「人生に おけるあなたの 一番の
困難、そして あなたの対処」

人生は大海原
一人ぽっちの主人公
塩辛い過去を掻き分けて
いくつかの困難を
お宝のように掘り起こすけど
並のものしか見つからなくて
日が暮れて
途方に暮れて

いっそのこと過去の私に
最大の試練の一つでも
プレゼントしに行きましょうか
そうしたら今の私は
特別になれるでしょうか

シュウカツカツカツ
カツカツカツ
いつの間にか私は
生け簀の魚
壁が迫ってくる
音がする
釣ってもらえるのを
パクパク待つだけ
無意味な言葉を
パクパクパクパク





ああ
海に行きたい
本物の海
私の中の
魚は自由に
黒いハイヒールは蹴っ飛ばして
薄いだけで役に立たないストッキングは
びよんびよんのアコーディオンに
自由気ままにラララ歌って
裸足で浅瀬を歩きたいの

そうしたら

シュウカツカツカツ
カツカツカツ

砂と風と
潮騒に混じって
ひどくくだらない音に
聞こえてきそうだ


自由詩 シュウカツ Copyright アヴィ 2009-01-01 21:44:54
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