新しい年に
あすくれかおす

短針が少しずつ
牛のしっぽに圧力をかけて
時計がまんなかで 手を合わせるよ

まるで「いただきます」
みたいな「おめでとう」だね

それは温もりある言葉だね 


新しくなった人々の顔には こころ
今日もみんな 
こころの夢を見ている


少女の笑顔が仏様になっていく
赤子の泣き声が仏様になっていく


そうして空気の薄い層が
なんどもなんども
一枚 また一枚とやぶれるみたいに
この世があの世になっていく


みおぼえのない自分を捜すように
大地も
コンクリートも
ネオンの消えたパーラーも
雪がしずくになる時間の
かけがえのない朝日を見るように


言葉が「文字通り」を歩いてく
路慣れたスクランブル交差点を
上手に進むように
熱の篭もった新年を
屋台で賑わすように


チョコバナナの釣り銭や
酒気帯びた白い息づかいや
着物姿の撫子たちや
両手にぶら下がった福袋や


在るもの全てが動いてる
瞬間をずっと生きている
何を歌おうか
今年は何を愛そうかと



こたつで猫がまるくなって
おもちみたいにまるくなってる

あなたとわたしとおもちのお腹
膨らんで
しぼんで


夢のようだ
膨らみながらしぼんでく
わたしたちの夢のようだ



あなたは新しい冗談を言う
わたしはどんな年になるのだろうと夢想する

おもちが小さく欠伸をする
欠伸も仏様になっていく

わたしはなんとなく
手を合わせてみる

まるで「いただきます」みたいな
祈りをこめる







自由詩 新しい年に Copyright あすくれかおす 2009-01-01 15:02:03
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