不安な航海
kauzak

僕らの乗った客船は軋みながらも
概ね順調に航海をしている筈だった

海は時化ていて甲板には
出られないけれど
船の中に必要なものは揃っていたから
退屈はしなかったし
取りあえずは安全/安心は護られていた
(少なくとも後続の客船よりは)
けれど変なウワサが客室内に流布しだした

 操舵室内で船員同士が対立している
 激しい対立で操舵放棄の状態らしい
 羅針盤も壊れてしまっているらしい

この客船は堅牢であまりに大型だから
この時化で揺れが大きくなりはしたが
(その揺れに不安を示す人も現れ出したが)
羅針盤を失ってその上まともに操舵しなくとも
流されるまま波間を漂うことはできるらしい

それをいいことに
流された先に何が待っているのか誰も説明しようとせず
操舵室内の主導権の行方ばかりを気にしているようで

操舵室に入る権限がない僕らが客室内で願うのは
この時化の中を冷静/安全に操舵してもらうことしかなく
この客船を操る船員が誰かなんて彼らが思うほど重要じゃない

このせめてもの願いすら叶わぬこの航海
軋む音が大きくなった気がするのは思い過ごしか


自由詩 不安な航海 Copyright kauzak 2008-12-30 23:17:55
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