いちばん遠い朝
たりぽん(大理 奔)

秒針は螺旋の軌道を描いて
歩くことでは辿り着けない場所に
らせんらせんを運んでいく
生まれることで届くだろう
窓の外で、まどのそとで

  ラッシュアワーに平気で押しのける
  普通に見える心が
  遠く戦争に繋がっている
  ひときわ遠い場所で
  スイッチを押すその手のように

自分が生きることは
世界が在ることとは関係がないと
そんなふうにつぶやく朝
私のせいで枯れる森もあれば
この手が育てる犬もいる

  戦争に反対するデモが通る
  普通に見える心が
  世界でいちばん戦争から遠い場所で
  チャンネルをかえる
  その手のように

せめて殺さないでいよう
螺旋を描く秒針のように
繰り返さないで進む
らせん、らせんを運んでいく
窓の外で、まどのそとで

争いの結末を急がないで
森の樹が三度も生え替わるまで
僕たちは未来の話をしよう
命を奪わないで迎える
いちばん遠い朝の紅茶に
私は一粒の角砂糖を落としたい


自由詩 いちばん遠い朝 Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-12-30 00:55:46
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