ひなたへ
長谷川智子



 来なくてもいいのに勝手に来たあいつ
 まるで私をあざ笑うかのように


あの日あの時あの場所に
あいつらのもとに
現れなきゃ
見なくて済んだ
知らずに済んだ
どこか別のところで笑って暮せてた
そんな気がする

目でものが見えるころからあった おろかなひずみ
とても憎らしい
わだかまるムカツキ
居座る愚かさ
まだ くすぶる

小さな木の家には ほかの人もいた
でもゆるやかによくつながるための
きずなを育てられるくらいに充分なお日さまも肥料も土もなかった
かれらはいつもどこかうつろでひんやりとした風を吹かせていたことを憶えている
そして私もうつろな眼と心をしていたらしい
外も薄暗くよるべのない灯りばかり
そこここにひもじく卑屈な眼がうようよと辺りをうろつく
擦るマッチも失くなるといよいよ寒さは増す
幼い私の中で黒く澱んだものがくすぶり始める
そしてとことんそれを薄め透かせるやり方を知ることもなく


ぬくもりの感じられない箱の中
私たちはつめたさを育んできた
育まされた、というべきか
航空母艦になり得ない不安さ
不安定さ
夫婦でありながらほんとうは片側のプロペラだけで動いてた飛空挺
寒い風はしだいに勢いを増していた
たじろぐ身
凍えるココロを抱え眠りにつく日々
他人は結局誰も助けてはくれない
足を安らかに据えられもしないまま
黒い輪、濁ってて触りたくないほど汚れている
眉をしかめる
ぎこちなすぎて身動きが取れない
分解したさとそのでき無さにもがき続ける
傍から見てもみっともなくてみすぼらしくて
イヤな熱気をさらしていた
思い出されるうつろな不安
いや、細い糸をより集めただけで弱っちい何か
そこから心は育たなかった

やがてその輪は弾力も勢いも失くして
自転車のタイヤのチューブがへたるその感触を覚える


すれた眼をそこどこかしこに向けてはすねる日々
乱れることもままならない
とてつもなくもどかしさもてあます
「キラワレル」がからみつきとらわれていく日々
快晴、でも目の前はまっ黒
取りつくろえないむき出しのエゴ
前のめりにむせび泣く 止まらない震え
ナイトメア
体が震えなくなるのは何時だろう


「いち早くそのループを切るんだ!」
頭でっかちの私は叫ぶ
ありったけの声を張り叫び続ける
ホーム re:スタート
ほんとうはこれがしたい
でもこれが一番の夢なんて悲しすぎる
アホでマヌケなプログラミング
何かマトモなソフトをインストールしたい正直


なにかと心乱し合いお互いにほっとできなかったからか
ドラマチックよりもスムーズさを求める
即効性
コレに尽きる
旧機種の求めたもの
私はそれを満たすためだけにいるんじゃない
遅かれ早かれ「ノー」を突きつけのませよう
愚かなつながり
ひずみ
抜き取り書き出せ
今の自分は嫌いじゃない
好きとは言い切れないけど


自分の中のうつろさについて
昔ほどは悩まなくなりつつある
それでも
辛い
生まれたときからアウェーなんてあんまりだ
酷すぎるんじゃない?これって

ほんとうのことの向こう側にあるもの
そんなもの知りたくない
そこに本当は何も生み出さないなんて認めたくなくて
わたしはいまも歪さにこだわり続けている


幸運なことに 私には 支えてもらえる仲間が現れた
彼らには言葉にしきれないほど 感謝している
今 言えるのは“ありがとう” いまの私なら 立っていられる


大きな地平線 新たな基準 そして 頼れる土台
じぶんのきもちにじぶんのあしがはえてあるきだせる
たよってるものはじゅうぶんすぎるぐらい(いっぱい)あるけれど


ルミエールからサンシャインへ
陰りから日向へ歩き出す
一歩 一歩 また一歩

歩き続ける




2008/12/28 Tomoko Hasegawa


自由詩 ひなたへ Copyright 長谷川智子 2008-12-29 13:51:52
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