つくろうひと
恋月 ぴの

私がまだサンタクロースを信じていた頃
父方の祖母と同居していて
私たち兄弟の面倒をみてくれていた
今にして思えば幼さ故とは言え
彼女には随分と理不尽ことしでかしたものだと悔いる

それなりの家から嫁ぎ
それなりの人生を送ってきたはずの老女がひとり
我が儘な孫ふたりの面倒を押し付けられ
団地サイズの平板な日々
小さな背中で生き長らえることに耐えていた

毎年クリスマスシーズンになると
美容院を営んでいた母の帰りは普段に増して遅くなり
私は祖母と弟の三人で母の帰りを待った
その頃は団欒の証しコタツがあって
もぐもぐと入れ歯を舐め続ける祖母の横顔に
訳も無く苛ついてみたりした

私がまだサンタクロースを信じていた頃
枕元には靴下を並べ
兄弟ふたり早々に床へつけば
二つ違いの弟が手を繋いで欲しいと甘えてきた
つれなく跳ね除けてはみたものの
悲しそうな横顔に負けて右手を差し出す

あの時の弟が私に求めてきたもの
それは不在がちな母の身代わりだったのか
それとも夢見ごこちへと誘う水先案内だったのか

今となっては面と向って問い質す訳にもいかず
枕元に並べた靴下の顛末など尋ねて話しを逸らした



自由詩 つくろうひと Copyright 恋月 ぴの 2008-12-25 20:54:04
notebook Home 戻る