香る
かんな

朝が嫌いだった
眩しいくらいの朝焼けが
カーテンを通り抜けて
わたしを叩き起こすような
十代の頃
セルフサービスの朝食
くりかえしのニュース
軽い頭痛に
制服を着せて
コントラディクション(矛盾)
そんな名前の香水を
ふりかけて
駅に向かう
電車に乗って
歩きなれた近道を通ると
十五分程で学校についた
何にも抗えないなまぬるい現実を
抱えたようなわたしが
わたしを嫌いだった

昼が嫌いだった
わけじゃない
それらしく勉強をして
疲れると保健室でまどろみ
時々生物準備室に遊びにいった
昼ごはんは
学校を抜け出して
よくコンビニへいった
放課後は
仲間とだべりつつ
トランプをした
ひと息ついて
ひとりになりたい時は
図書室へいった
そして本の海を泳いで回った
そんなレールにのったような
歩き方するわたしが
わたしを嫌いじゃなかった

夜が好きだった
夜中の二時、三時に
部屋の窓から軽く飛び降りて
家を抜け出す
そうして
海まで歩いて
煙草を一本吸って
ぼんやり
携帯画面と
星を
交互に眺めてから
またきた道を
何も考えず
とぼとぼと歩いて帰った
そんな
親や世の中に
ほんの少し逆らうような
ベタなことをするわたしが
わたしを好きだった

ふりかえれば今も
懐かしく香る
わたしという矛盾



自由詩 香る Copyright かんな 2008-12-19 18:57:00
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