ヒビ入りミラー
愛心

気づいたときには
あたしの体は
小さい傷で溢れかえっていた

顔のかさぶた
剥けた唇
腕の切り傷
胸元のできもの
指先の逆剥け
へその横の湿疹
太もものかぶれ
膝の擦り傷
ふくらはぎの痣
マメだらけの足

汚い

汚い

鏡に映る自分の
なんと汚く
痛々しいこと


鏡よ鏡よ鏡さん

この世で一番傷だらけなのはだあれ?


[アタシ]があたしを指差して
妖しく笑う

おーまーえ



鼻で笑った

なんて正直な鏡さん

でも残念だけど
あたしは優しいのが好み


傷を見て嘲笑う
傷を知らない鏡はいらないんだ


拳を握りしめ
鏡の[アタシ]を殴りつけた



女の子らしくなくても
傷だらけでも
その分の痛みを
あたしは知っている


ヒビ入りミラーに映る
包帯の捲かれたあたしの白い右手


自由詩 ヒビ入りミラー Copyright 愛心 2008-12-17 23:46:30
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