寝不足パンクの憂鬱
緋月 衣瑠香

音もなく夕日は眠りにつく
車のライトに照らし出されるのは寝不足の私
赤いイヤホンから頂き物の曲が飛び出してくる

私の帰宅時間と国道の車の多い時間は重なる
あえて国道沿いを歩いて帰ってくる
膝上のスカートが風と戯れるが
私はイヤホンから聞こえる音をひたすら拾い上げる

耳元で男性ヴォーカルが私の心へと叫ぶ
英詞だから英語が苦手な私にはよくわからない
でも私にはわかる
彼が何かを伝えようとしていることが

君はどうしてこの曲を私に与えたの
確かに演奏力もあるし私好みのヴォーカルの声だけど
何かこの曲に隠されたメッセージがあるような気がして
そのメッセージを曲全体が訴えかけているのに
パズルが苦手な私には暗号が解けない

この国道を歩いて行けば君に会える
そして直接君に聞くことだってできる
でもその距離はあまりにも遠すぎる
道は見えてもゴールは見えない
そして何より私には歩き出す勇気がまだない

車のライトが私を急かす
答えは解ったかい
勇気は出たかい
私はプレイヤーのボリュームをあげて意識を紛らわせる

再びスカートが風と戯れるが
仕方ない
これも女子の定め
きっと君にはこの気持ちがわからないでしょ



自由詩 寝不足パンクの憂鬱 Copyright 緋月 衣瑠香 2008-12-15 15:27:41
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