冬のカルテ
A道化




あ、
雨の夕刻は
アスファルト状の黒いノートにおいて
ひとつぶ、ひとつぶ、別々の
無数の濁点だ、





雨滴、
雨滴、
黒く
滲んで
広いひとつの痣として
混じり合うふりをしてゆく冬の夜にわたしたちは
何も見出せぬ眼球を夢の中へかくまうことを
おやすみなさい、という命じ合いを装って許し合う
わたしたちは、別々の、ひとつぶひとつぶだ、それなのに
混じり合う感覚を夢見る眠りへ、眠りへと
限りなく目を閉じる、閉じれば、
黒い、痣の、冬の、
夜。


ただ
その時だけ
わたしがあなたに
全身麻酔みたいに完璧に優しい、
という真相を
雨と夜と夢が
濁してくださる





あ、
そして朝は
カーテン状の白いノートにおいて
初めから言葉ではなく



きらきら
誰よりも早く眼球のことを見破りながら
その光で
ほら、きらきらと
すべてを隠滅してくださる


2008.12.13.


自由詩 冬のカルテ Copyright A道化 2008-12-13 11:16:00
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