反射光
佐々宝砂

夜勤明けてひとりで酒を酌む
やなことはやらないでおこう
きっとあのひとは許してくれるから
太陽がしらけた空にひかる
暗い空に光っていればいいのにねえと
稲垣足穂的につぶやいても
太陽はあくまでも昼の太陽のまま
うむ月まででかければ
見たいような太陽が見られるかな
でもその場合
見たいのは太陽じゃなくて地球
青く白く輝く地球照
宇宙というものは根本的に昏いのだから
たとえ反射光でも私を温かくする
鏡でしかない私を
あなたは少しでもいとおしんでくれますか
太陽がどこにあるかわからないこの世の中で
(ああ空にある太陽はいつも太陽ではあるのだけれど)
私はただ反射する存在
しらけた空に光る太陽を
ただ私なりに反射する存在
あなたもまた鏡でしかない
それを私は知っているけれど
鏡像たるあなたが
それでも私には必要なのです
私の真の姿を私は知らないし
それを束縛するつもりはない
ありきたりの未来図など知らないし
ほしくない
私がほしいのはただ鏡像のあなた
それですこしもかまわない
見上げればしらけた空にうすらと白い月
あの月の光でいい
あなた自身の光ではないとしても
あなたを経由した光が
その光が私はほしい


自由詩 反射光 Copyright 佐々宝砂 2008-12-11 10:35:29
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