時間
AKiHiCo

部屋に時計を掛けた
針はあの時から動かしていない
半ば諦めを含んだ空模様
まるで僕の心みたいに
溜息を舌の上で転がして遊ぶ

――戻りたい戻れない
動けない動きたくない――
(でも本当は知っている)

この部屋だけは過去も未来も
この部屋だけは止まったまま
この部屋だけは只管に不変的
この部屋だけこの部屋だけこの部屋だけは
この部屋だけは
この部屋――

時計の針は一時十六分
何の時間かは忘れてしまった
けれど
其処から前へ進めなくて
後ろは崖で奈落
意味のないような時間の中を
寡黙に佇み僕は宛ても無く

零した涙は宙で宝石になり
触れると虚しく砕けた
その光は鮮明で煌き冴える
けれど
僕にはもう攫めない
眼を覚ます時が
――来た

誰かこの部屋のドアを
(誰かじゃなくて貴方が)
ノックして開けて
優しく受け止めて
時計の針を進めて
其の手でそっと
この部屋から連れ出して

助けて助けて助けて
聞こえますか、

本当は助けて欲しかった
縛られた縄を解き
枷を外して
其の手で
優しく
ねぇ


自由詩 時間 Copyright AKiHiCo 2008-12-10 03:20:15
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