キスの理由
高杉芹香

きみは少し気付いていた。

もう、あたしがきみに恋してないことを。





久しぶりに部屋にやってきたきみは





うちの壁に飾る

シャツや写真や手紙とか

きみに関係ないものたちを

やけに気にしていた。



何度も何度も

それについて聞いて来ていた。







ふーん・・・





って言うきみの横顔が

少しさびしかった。





きみは大切な理解者。

けど。

もう恋人じゃないんだ。









あたしは

きみに出会った理由を考えていた。







きみとのこと。

きみとの夜のこと。

きみとの朝のこと。

思い出していた。







あたしはきみにいつも正直だったと思う。

きみにいつも応えていたと思う。









きみもまた

いつもあたしに正直だったと思う。





昨日のきみもきっと・・・。





だから。

あたしを抱き寄せてキスをした。











あんなにさびしそうに

キスするなんて。











じゃぁね

ばいばい・・・



そう言ったきみの背中が

真冬の夜空に同化した。













次の約束はしない。







きみは

いつかまた

あたしに会いたくなるの?。





















いつかまた。

ここに来るの?。

















傷つくのに。

それでも。

ここに来るの?。









あたしはもう。

きみに温度を移せないのに。





自由詩 キスの理由 Copyright 高杉芹香 2008-12-09 03:12:01
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