遠く、さがしにいくと
たりぽん(大理 奔)

   波の音が誰かの悪口に聞こえるなら
   わたしはもうダメだろうね
   そのむこうにあるうねりを聞かなければ
   わたしはもうダメだろうね

河口の土手でススキが揺れているのを見ると
なにか寂しく思うのは
そのメトロノームの針が風に揺られているのに
雲が流されないからでしょうか
手の届かない高さには、その高さに似合った
そんな風が吹いているようです
透明な、とうめいな天井がそこにあって

   灯台はなにかを照らすのではなく
   ここにいる、ここにいると
   ただ、ここにいると

ススキのように揺れてみます
風の行方のほうに顔を向けます
少し先の、小高くなった砂丘の上で
長い髪がもっと風のさきの方へ
音楽をなびかせています
うたであって欲しいと願います
うたであって欲しいと願います

灯台の明滅より遠くへ
それは照らして欲しいのです
ここにいる、ここにいる
ずっと、ここにいると

   透明な、とうめいな天井がそこにあって
   暗闇とそれとが同じ意味になる時間に
   漁り火を映したりします
   だれに別れを告げるでもなく
   手を振る、それを寂しいと
   名付けてしまうのでしょうか


自由詩 遠く、さがしにいくと Copyright たりぽん(大理 奔) 2008-12-08 00:44:52
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