祈望/歌声
梶谷あや子

(祈望)


ひとみに焼け着いた君の故郷も
見知らぬぼくの
澄み渡る戦場も最早ひと巡りして
帰る場所はみな同じ
なのになぜ、こんなにも唇は乾き喉が
二度と会えないようにつかえるのだろう
主よ、あわれみ給え
敬虔なるぼくたちのため
この命がずっとこのままなら
闇雲に朝に臨むこともないのに




(歌声)


この瞼が降り注ぐ頃には
くずおれたビル街を信じる
人の心からという
そんな狂おしい一片の言葉から
逃げ出すための口上を
薄れていく悲しみから拾って
別にもう晴れなくてもいい
顔も名前も忘れてしまうけど
夜が来ても
その震える声は続いていると思う





自由詩 祈望/歌声 Copyright 梶谷あや子 2008-12-06 19:27:27
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