そっと
青の詩人

神様がくれたまなざしで
12月のキャンパスはやわらかにぬくもる
ATMの順番待ちにいらいらする必要も無い
足元に立ってた草は
きっと一生待たなきゃいけないんだから

何のために花は咲くんだろう?
それを待っていられるんだろう?
それが幸せかどうかなんて
これっぽちもわからないのに!!

あんなにもがいて選んだはずのこの未来なのに
全て投げ出してどっか行きたくなる
あるいはどこへも行きたくなくなる
風になりたくなる

自分の意思などおかまいなしに選ばれた場所で
どうして草花や木はあれだけ美しく立っていられるんだろう
もしかして彼らも不安を抱えているのだろうか
それを見せないだけで

心があったとしたら
何て言うかな

俺だって自由に動きたいんだよおおおおおおおお!!
とか
人間皆消えちまえ!!!
とか
思ってるのかな

でもなんとなくだけど
そんなことは言わない気がする

もしも話せたとしてもきっと彼らは
にっこり微笑むような気がする
誰にも心配されないように
ひとりで揺れてるような気がする

僕らは話せるのになぜか話せなくて
自由なはずなのにいつも何かに縛られていて
幸せなはずなのにどこか不満を抱いていて

残り少なくなった言葉たちが木の上で
かさこそとお話している

<いつさよならしようか
最後になんて伝えようか
もう少し話したかったな
もっと笑いたかったな
幸せだったけど
一度でいいから空を飛んでみたかったな
次もまたこの木に生まれたいな
生まれ変われるかな
ねぇ、ぼく生まれ変われるかな>

メインストリートの無機質に嫌われて
文字通り無残にバラバラになって消えていく命たち
その最期はあんまりだろう
全部土に返したかったけど
そんなの現実的じゃない
だから
たった一枚の銀杏を
僕は土に返した
せめてそこでは
ちゃんと世界と混ざれるように
ひとりぼっちじゃないように
そっと悼んだ
彼らの叫びのように
そっと


自由詩 そっと Copyright 青の詩人 2008-12-04 01:22:44
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