折り鶴
かいぶつ

あなたが
折り鶴になった

折り紙セットの中に
たった一枚、封入された
金色を選んで

目を覚ますとあなたはすでに
きれいに折られていて
羽を広げてやると
テーブルの上で
くるくる回って見せた

わたしはあなたの
いちばんあなたらしい姿を見ながら
暮らして行けることが
嬉しかった

わたしの様態が悪化して
あなたのために少しだけ開けておいた窓も
体を冷やしちゃいけないからと
先生に鍵までかけられてしまい
あなたにも以前ほどの
元気が見えなくなっていた

小さくしぼんでしまったあなたを
もう一度ふくらませてやりたかった
わたしは花瓶の横に倒れた
あなたを手にとり、唇を当て
息を吹き入れた

するとあなたは
パンッ。と乾いた音を鳴らし
破裂してしまった
散り散りになったあなたを
ベッドの上で一枚一枚、数えながら
大声で泣いている私の姿を見た先生は
わたしが数えた数と同じだけの数を
やさしく薄皮を剥ぐように
一つ、二つ、と引いていってくれた

窓から心地よい風が
殺風景になってしまった病室に入り込み
廊下へ向かって駆けて行った
わたしのからだが
わたしに帰ってきたような
そんな気分の中で
わたしは折り鶴を折っている

玄関まで見送りに来てくれた先生に
お礼とお別れの言葉を告げ
迎えの車の中から
もう一度、大きく手を振った

わたしとあなたが居た
二階の病室が見える
少しだけ開いている窓から
折り鶴が飛び出して
誰も知らない水辺を探しに行くかのように
東の空へ消えていった

金色と銀色の折り鶴が
きらきらと朝日を浴びながら
二つ並んで消えていった


自由詩 折り鶴 Copyright かいぶつ 2008-11-24 18:41:36
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