無鉄砲社会
あおば

              081119


100年に一度の津波ですと
テレビが
怖いことをおっしゃるので
海の方を眺めたら
金融危機のことだった
一人あたり12000円の定額給付金で
作られた格差社会を調整できるのかと
不安に思ったが
もらえるものはもらっておこうという気もして
もらうために必要な書類の準備を進めている

海の中にも格差社会が拡がっていて
集団をつくって身を守る小魚たちを
大型のどう猛な魚たちが襲う
逃げ遅れたものや
動きの悪いものは
簡単に捕まって
まるごと飲み込まれている
海の中のことだから
魚たちの世界のことだから
気にしないでいるが
もしも、来世に魚に生まれ変わったら
来世も地獄だなと
人間に生まれたことの幸せを思う
西遊記によく記されていたセリフだが
永劫回帰を願う気持ちが失われていく
100年に一度の大津波の時でも
魚ならば大丈夫
怖いこともありませんと
耳許で囁く人も居て
来世は
金融危機はありませんぞと
のんきなことをおっしゃる

ピンボールで遊んでいた頃が懐かしい
一人でも楽しめるのだと
父親が買ってくれたのだが
父が入院していた
病院には遊戯室が無く
パソコンもできない父は
退屈していただろうと
少しだけ心が痛む

すべてのプログラムから
ゲームに進み
ピンボールにたどり着く
クリックすると
平面的な画像があって
ピンボールのようだ

100年に一度の金融危機なので
車も売れない
食料品の価格が上昇している
今まで売れたものが売れないのだから
食料品も売れなくなって
安くなるのかと思ったら
高くなっていく
これでは我が家の経済も破綻だと
財布の紐を締めているのだが
のんきな我が家ですら買いたいものも買わない
食べたいものも食べない
どうしても必要なものは
リサイクルショップや
ヤフオフで安く競り落とす
生きていくための
手数が増えて
遊ぶ暇もなくなって
ピンボールゲームも
不要となった

どなたかにお譲りしたいのですが
標準の付属品だから
譲るわけにも行かない
ソフトウエアは使用権を行使しているのであって
その一部が不要だからといって
その部分だけをだれかに譲渡することはできない

無鉄砲な社会に生きているので
射撃は苦手であるが
子供の頃には
原っぱで野球をしたことがある
フォークボールも
ナックルボールも
カーブですら
苦手としていて
失投気味の
ゆるい直球狙いを専門としていた


自由詩 無鉄砲社会 Copyright あおば 2008-11-21 07:52:57
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