「無鉄砲社会読後感」の読後感
小川 葉

 
あなたと
ともに死ぬつもりになって
恋をしたい
というときの
あなたとは
あなたなのか
あなた以外なのか
そのどちらでもないのか
わからないまま
あなたと恋をしたい
わたしがここにいる

三十九歳は
そう思いながら
社会について考えはじめる
そうしたいわけでもないのに
そうしなければ
三十九歳ではないような
ただそれだけの気持ちで
ポオズをとってみる

引き金を
いつでも引ける
それも三十九歳だった
わたしが
わたし以外でも
あるいはそのどちらではない
死者あるいはまだ生まれていなかった
その向こうにだけ存在してる
わたしというものを
あなたははたして愛することが
できるのだろうか

三十九歳は考える
その先には永遠があると
永遠は
わたしがいなくても
わたしがいたとしても
永遠に変わりない
あなたがあなたであると
わたしが認識してもしなくても
永遠はそこにいて
そこにいた
これからもそこに
永遠だけがある

あなたと
ともに死ぬつもりになって
恋をしたかった

そのことだけが変わらない
三十九歳のわたしが
わたしとして決断したから
引き金を引いても
引かなくても
鉄砲は鉄砲のまま
存在もせずただ比喩として
わたしとあなたは永遠になるだろう

そうして
生と死の狭間に
恋とはたしかにあったのだ
 


自由詩 「無鉄砲社会読後感」の読後感 Copyright 小川 葉 2008-11-21 00:51:42
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