針になる
ゆるこ

 
思考でパッチワークをしても
なにも暗躍しない
鉛色の空は重く、冷たく
影法師を縫い付けては、体温を奪う
 
視力が落ちた日の朝
妹は聴力を失い
お母さんは足を失った
お父さんは肝臓と命を失った
 
 
還元は夢の中で
掻き分けながらダイブしては
変拍子の町中に、
       溶ける
 
降水確率と同じくらいに
ひとり。
 
 

 
 
田舎のじいじとばあばは
いつだってお金をくれます
一緒にいてあげられないからって
口を金魚みたいにさせながらいいます
 
そのたびにわたしは
しわしわの手のひらを
選挙に出馬した人みたいにぎゅっと握り
にっこりと笑うのです
 
 
(嘘みたいに、ひとり。)
 
 
 

 
 
 
こめかみに鈍い痛みが走れば
救われるのか
コンビニのおにぎりを頬張りながら
暖かい部屋で考える
 
きっとそれは、砂糖菓子みたいに甘い
わたしはひとり
針に
なりたいだけなのに。


自由詩 針になる Copyright ゆるこ 2008-11-15 08:55:12
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