生物のため息
ばんざわ くにお

冬枯れの道を
男は歩いていた
街路樹はすっかり葉をおとし
青々と葉を茂らせていた頃の
面影もない

かつて若かった頃
男の夢と希望に
生きがいを見つけ
子供の成長を喜んだ
そんな自分を
神様はほめてくれた

街はずれで
今は珍しいこじきに
あった
こじきも昔は
夢を持っていたが
夢はかなわなかった

男は昨夜バーで飲んだ
店の女との会話を
思い出していた
とがったくちびるで
女は言った
あたしにはどれもこれも
同じことなのよ


自由詩 生物のため息 Copyright ばんざわ くにお 2008-11-15 08:38:10
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