ドライ
チグトセ
奨学金の返還誓約書を提出しなきゃいけないとかで
今日、はじめて三号館という建物の七階までのぼって
はじめてそんな高い場所からこのキャンパスを見おろした
僕は、
四年もこの学校に通って
その場所についてほとんどなんも知らず
もっとすべきことはたくさんあったんだ。
とてもぼんやりと正直に思う
なぜあの聞こえる笑い声のなかに溶けこむことを
しなかったんだろう
オレンジ色の回路、
そのうえにぼさぼさの黄昏がのさばって
ひときわ目立って残響する
あの大学生然とした笑い声
それはなんだかノスタルジックで
幻聴のようで
なぜか喉が渇く。
僕の見聞きしたあれこれ
そこにあった廊下も、廊下の屋根も
屋根でできた影も、影をつくっていた太陽も
その眩しい円も、空き地に生えていた雑草も
暑そうにコンクリートから立ちのぼっていた蒸気も
もっと空間は静かで、僕は何も考えていなくて
ただ時間が過ぎて
記憶がお釣りの小銭のように残る
でもそんなに思いっきり生きれん
思いきっても出てくるのは
くしゃみと鼻水くらいのもんで