ドライ
チグトセ

奨学金の返還誓約書を提出しなきゃいけないとかで
今日、はじめて三号館という建物の七階までのぼって
はじめてそんな高い場所からこのキャンパスを見おろした

僕は、
四年もこの学校に通って
その場所についてほとんどなんも知らず
もっとすべきことはたくさんあったんだ。
とてもぼんやりと正直に思う
なぜあの聞こえる笑い声のなかに溶けこむことを
しなかったんだろう
オレンジ色の回路、
そのうえにぼさぼさの黄昏がのさばって
ひときわ目立って残響する
あの大学生然とした笑い声

それはなんだかノスタルジックで
幻聴のようで
なぜか喉が渇く。


僕の見聞きしたあれこれ

そこにあった廊下も、廊下の屋根も
屋根でできた影も、影をつくっていた太陽も
その眩しい円も、空き地に生えていた雑草も
暑そうにコンクリートから立ちのぼっていた蒸気も

もっと空間は静かで、僕は何も考えていなくて
ただ時間が過ぎて
記憶がお釣りの小銭のように残る


でもそんなに思いっきり生きれん

思いきっても出てくるのは
くしゃみと鼻水くらいのもんで




自由詩 ドライ Copyright チグトセ 2008-11-11 06:50:38
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