すきだよ、おかあさん
ki

お母さん処女を失くしました
おかあさん
おかあさん男の人に抱かれました
生まれてはじめて男の人に抱かれました
父親のでもない誰でもない
ちんぽをひたすら口の中に出しては入れてを繰り返して
そんなことをするために稼いだんじゃない
命が少しづつ剥ぎ取られて
お母さんはせっかく私を生んでくれたのに
おかあさん私は
一瞬の快楽が永遠だと信じ込もうとしていた、


俺は一生このままなんじゃないかと思って泣けてきたバイト中
ブックオフ店員28歳
自分ヘチマみたいなんだよね、すかすか
そんな彼も今仕事を徹夜でがんばってる、らしい
すかすかなんて、ないよ

28歳の彼が資格を取るために頑張っている
バイトくらいしろよーと言ったら
この歳でバイトするの大変なんだよと一言
まあ貯金はあるしと言った、もうずっと直らない口癖みたいに遠くを見た
貯金なんかすぐなくなる
そんなの、たんまり食べた後にダイエットするって言ってるようなもんだと言ったら笑った君は、

お母さんがやせ細っていく姿を横目で見やりながら
今日も逃げるように家を出て行く
友だちと繰り出す繁華街はとてもきらびやかで
愛とか希望とかもお金で買えそうだよ
お財布の1万円でネックレスを買う
恋人代わりのアイドルのブロマイドを買う
一生あそんでくらしたいねと、冗談でわらいあう
将来もやっぱ生きてるだろうからね

人類滅亡の日のためのシェルターにおかあさんという名前をつける
おかあさんは無敵だ

ねぇ、おかあさん
もっとお金がほしいよ
もっと愛がほしいよ
もっと誰かがほしいよ
もっと君がほしいよ
もっと居場所がほしいよ
だいすきっていいたいよ
もう自分を大切にしたくないよ
もっと広い世界を見たいよ
これが世界だと言っても納得できないよ
だいきらいだよ
狭いよ
でもあったかいよ
ねえおかあさん
おかあさん以外の大人に抱かれたの
すきっていったの
あの人は何もかも忘れさせてあげるよと言ってわたしの頬を包んだの
どんなに傷ついても
おかあさんが守ってくれるからへいきだよ

お金はありますか
ここから先はお金が必要です
お金ありません
泣いても許してもらえません
お金ありません
じゃあ、あなたもいませんよ

家も貸せません
友だちもできません
ごはんもあげません
恋人も寝る場所も服も
わーわーわーわーわー
走り出した
私わたしわたしわたしわたし
お金ない
あなたと手つなげない
お金ない
会えない
お金ない
働く?
なんのために、
おかあさんを心配させないように

身体を重ねても
何度もすきすきすきって言っても
ほんとうがどれかわからないよ
ラブホテルに降り注ぐ金は
いったい命の何を捨てた代金なのだろう
精子の無駄遣い
白いカルピスのように甘くはない
一番酷いのは一番何も感じないことなの
無味無臭のちんこ
暗闇に浮かび上がるぬめぬめと光る白い
巨大な肉の塊は
射精もせずただこちらを見ていた
向こう側の眼ふたつ
ずんと付かれて
ただ痛みしか感じなくて
世界が赤くなって
あなたの瞳は私を蔑んだ目で見ていたなあと
思考の端でぼんやりと思い出だしていた
2人でご休憩4500円西川口石亭にて
お金があればこんなことも可能でした
世界を手に入れたいのですか
あの子のハートをつかみたいのですか
そのお金にはどんな意味があったのだ
おかあさんにはいえない
もう私これから男の人に甘えるね。ごめんね、おかあさん

かなしくてかなしくて
とてもやりきれない
このやるせないもやもやを
だれかにつげようか

泣きたい夜
お母さんが死んだ姿を想像するの。
お母さんが死んだらと考えるとすぐ涙が出そうになる、
おかあさん
おかあさん
おかあさん
おかあさん
なんで私を置いていくの
もっといっぱい話したいことたくさんあったよ、
ねえねえねえおきてよおかあさん
おかあさん
おかあさん、
わたしもっと手伝いとかするから
いいこにするから
いつかくるその日に備えて泣いておくの
でも耐え切れない
でも社会の難しいこととかわかんないから
なんであの橋本知事が高校生のただの女の子を
紺色の女の子を泣かしたのかなんて想像したくもないから
バイトを週5入れて残業できて忙しい仕事を選んだ
こんなに忙しくて時給800円
人類滅亡の日はお母さん死んだ日です
お母さん死んだ日です。
お母さん死んだらどうする?
わーわーわーわーわー
後輩が劇団員をやっている、テレクラで働いてる
テレクラで5分間セックス
客はお金がないから早く入れようとしてくる5分で済ませたいんだ
それで金を稼ぐ

お母さん私は今日処女をなくしました
知らない他人にあげてしまいました、
誰かに愛されたかった
世界は鮮やかでした
いつまでも消えない傷とか喜びとか悲しみを知りました
でも決して誤解しないで、うれしかったんだ
私は愛したかった
それでも私はお母さんの子です
残業をいくらしても
時給800円では体はぼろぼろで心もぼろぼろで
でもお母さんがいるから、なんとかして生きていけるよ

もうあの人は私に会ってくれないよ
それでもおかあさんがいるからへいきだいじょぶ、まだいける
お母さんはお金だ
お母さんは未来だ
お母さんは社会だ
だから
助けてください
同情する前に金をくれ
おかあさんがないと私は何もできない
どこにも行けない


ラブホテルでかくれんぼしよ
バイト代がなくなるまで愛し合えればいいんじゃない?


おかあさんがしんだら
このせかいもしんだよ
おかあさん
おかあさん
はやくごはんつくってよ
海に行くからおかねちょうだい
ねえ、おかあさん
の財布はもう、からっぽです。


自由詩 すきだよ、おかあさん Copyright ki 2008-10-31 21:27:21
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