名前のない歌
かのこ

恐る恐る結んだ声が
誰の目にも止まらなくてよかった
途切れそうなほど小さく続ける
名前のない歌
明日になったら忘れられる歌



身体の内側を洗うように
想いを言葉にぶちまけても
新しく取り替えることはしない
出来損ないの酸素を取り込んだ血を
わざわざ取り出してみなくても
呼吸をすればゆっくり流れていくのが
わかるから
聞こえるから



ねえ、あたしには
今も揺れているよ
ただ頼りない旋律が
通り過ぎていく言葉が



淋しさが生きている証なんだと
気付いた後も
誰かに寄り添おうとする
あたしはあたしが嫌いだよ



震えながら結んだ声が
割れんばかりの響きになる
音の洪水の中で
あなたを忘れて眠る



自由詩 名前のない歌 Copyright かのこ 2008-10-31 03:30:57
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