名前のない歌
かのこ
恐る恐る結んだ声が
誰の目にも止まらなくてよかった
途切れそうなほど小さく続ける
名前のない歌
明日になったら忘れられる歌
身体の内側を洗うように
想いを言葉にぶちまけても
新しく取り替えることはしない
出来損ないの酸素を取り込んだ血を
わざわざ取り出してみなくても
呼吸をすればゆっくり流れていくのが
わかるから
聞こえるから
ねえ、あたしには
今も揺れているよ
ただ頼りない旋律が
通り過ぎていく言葉が
淋しさが生きている証なんだと
気付いた後も
誰かに寄り添おうとする
あたしはあたしが嫌いだよ
震えながら結んだ声が
割れんばかりの響きになる
音の洪水の中で
あなたを忘れて眠る