あなたが るるる そこにあるということ
ピッピ
1
るるる
時には名もないあなたを「あなた」と呼んでみる
「あなた」 あなたはふりかえる 顔のあるあなたは
時として 「あなた」ではあるものの あなたではなくなってしまう
時がある 「あなた」 わたしはくりかえす あなたは「あなた」ではない
でもあなたはふりかえる 「あなた」のまねごとをしながら
笑顔じゃないかお それも「あなた」のもの あなたのものではない
あなたは「あなた」になる 「あなた」 「あなた」はくびをかしげる
あなたは「あなた」であることに疑問を投げかける
「どうして『あなた』と呼ぶんだい?」
「だってあなたは『あなた』だもの」
「あなたは『あなた』ではないよ」
「ではどうやって呼べばいいの?」
「あなたでいいじゃないか」
わたしはあなたとよんでみる あなた あなたはふりかえる
あなたはあなたとしてふりかえる 笑顔 あなたはあなたにもどる るるる
2
東京駅から三分くらい歩いてようやく迷ったことに気付く
あなたはいない 目的地にあなたはあるはずなのに ああ 目的はどこ
わたしはばかだから と誰のためにもならない理由を探しながら歩く
時計はもう約束の時間を指しそうになる 少し余裕のあった時間は
あなたとわたしのあいだをすみやかに過ぎ去っていった
あなたはそこにある はずなのに わたしがそれを確認できないもどかしさ
るるる もどかしさ
3
あなたがあなたを形成するころわたしは深い眠りについている
わたしの唇をうばおうとも自由 それでもあなたはここにはいない
それはこのまちに張りめぐらされたたくさんのルールその他
だれもくぐってこられない(それは愛とか偽物とか全てを駆使しても)
だれもくぐってこられない壁があるから
あなたがあなたの部屋であなたを形成し始める
あなたの部屋があなたの居場所
あなたの居場所には誰も干渉できない
それはわたしの唇でさえ
わたしの唇でさえ るるる
わたしの唇でさえ
あなたがあなたの部屋であなたを形成し始める
わたしは目を閉じる 目を閉じている 唇も閉じている
唇は意志を持たない 持たないのである るるる るるる
あなたが完成してしまう わたしの唇の見えないところで
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