盲目の猫
がらんどう


自らも足音を立てぬ盲目の猫は、泣き砂にのみ足を下ろす。
風紋に食らわれる足跡に、可能な限りの夜を映し、銑鉄の水盆に月を盗む。
青く凍てついたまま水没し、日々に焼ける砂のみが、ただ残る。

二歩進んで首を縊る、音も立てず首を縊る、音、もなく。
永劫の蝕、環となって消える。消える。

猫には水葬が相応しい。
肉体を持たぬ船が、漕ぎ出ていく。
不眠症の水夫の手で。
音、もなく。音、もなく。
音もないほど遠く。遠く。見えないほどに遠く。



自由詩 盲目の猫 Copyright がらんどう 2004-08-03 15:36:18
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