空を見上げる
フミタケ

カーテンを開ける
今日
彼女は何を見るだろう
地上17階
いつもの街並
いつもと少しだけ違ってく景色
夕べの事がまだ
部屋のそこここに残っていて
ほのかな風の粒子となって
揺れるカーテンの外へ
流れていく
午前六時すぎの光と
出会い
交わり
すれちがいながら
夜のゼリーがただれてくる頃にまた
もうひとつの優しさが
はつらつとやって来るように

空を見上げていると
なんだかすこし切なくて
肌寒い朝の空があまりにもキレイで
街はせわしなく行き交い
忘れてしまったかのように
その青をすくいとることはなく
顔を上げて
遠くおもいを馳せる時
それはいつも
僕だけの空で
君だけの空で
離着陸する
飛行機の窓から
歪んでつぶれたような
見た目をまるで気にしない正直さをさらした無防備な大地を見渡したときのように
雲の層
層になった雲のグラデーションに目を凝らす
ステレオからディストーション 散っていく
数時間かけて登った標高3000メートルの山の展望
富士山から江ノ島、横浜、新宿のビル群まで見渡したときのようには
君のいる街の方の空を見つめる事はできないんだ
ここにはビルが建ち並び
見あげる事が許されるのは
垂直の空
思い出せるだろうか
いったい
そんなことができるだろうか
冬に生まれた一年間が静かに満ちて
成熟するのは暦のどの1日なのか
まわる円の頂点はどこなのか
自立し大人になるのはいつなのか
駐車場から
空を見上げていると




自由詩 空を見上げる Copyright フミタケ 2008-10-25 22:23:11
notebook Home 戻る  過去 未来