今日ここから出て行ったものがやがてデッドエンドの果てからふたたび戻ってくることがないように
本木はじめ




パレードの喧騒にわかに散ってゆくここから遠いこころを想う



思い出す前のぼくらは幸福で雨雲は必ずしも雨を孕んでいるのだろうか



マタニティブルーできみは海の中ほんとはぼくかもしれないけどね



充電が切れそうだから轟々と風の音だけ聴こえる深夜



出会いまた別れて出会う路上にはふたりの影がなくしたふたり



水面に映る空など一瞬で壊れてしまうこれからの花



メロディがぼくらの不安を包み込む真夜中蛍光灯が割れます



「なぜ」とかさ問われていつもあっさりとなぜかとわかるワケなくないかい?



バラという漢字をきみに聞いたのにこれはあきらかに醤油



真夜中に卵投げ合う僕たちは進化してるの?退化してるの?



致命傷負った小鳥にさっきからホイミ!ホイミ!と叫んでるきみ



吸い殻や灰がゆめより盛りだくさん簡単なことからあきらめる冬



雑草と花の違いもわからなくなってしまったきみの正しさ



もう誰も覚えていない夢がありそして僕らも誰かの夢中



青空を見事に裂いて冬がくる昨日の明日をただようツバメ



照明が赤けりゃきみの頬も赤ぼくの真夜中つんざく美声



愛だとか言ってろ綺麗な冬の海とつぜん現れてくるテロップ



さよならはあなたがいなくなってから遠い記憶の彼方へと告ぐ



楽園に似た廃園で蝶を追う赤い火の粉と気づかぬきみと



円環に疲れて星が、ああ綺麗 きみはどこかで笑ってますか








短歌 今日ここから出て行ったものがやがてデッドエンドの果てからふたたび戻ってくることがないように Copyright 本木はじめ 2008-10-24 22:17:27
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