指先
小川 葉

 
指先から入る
表面張力の
弾力にはじかれて
はじかれるうちに音もなく
入ってゆく

指の骨の
白い洞窟のすきまから
声が降る
あの声もその声も
白く堆積する

カルシウムが育ち
軋む音をさせて朽ちてゆく
その中に

入った時と
同じように
そこから出ると
指先から聞き覚えのある
いきものの声が
聞こえてる

あなたは存在しなかった
わたしのように
役にたたない
宇宙とおなじ数だけある
本のページを
生まれるまでめくり続ける
 


自由詩 指先 Copyright 小川 葉 2008-10-22 00:38:37
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