みどり来るみどり
木立 悟





何かが落ち 水煙がたつ
鳥が空に背を向けている
滴がどこかへ着くまでの
光のふるまいを見つめている


夜が海辺の岩をつかむ
幾度も幾度も つかんでは離す
道のまたたき 道のさまよい
音は太く あたたかくなる


はじまりの前に終わりがあり
そこからすべてがはじまってゆく
ひとつの星座もありえないほど
密にふくらむ星の群れ
はざまはわずか
光見ぬ音


わたしはわたしをひらいていいか
わたしをわたしに招いていいか
夕暮れは山の上からいつまでも去らず
水の音ばかり打ち寄せている


どこへ流れ しがみついても
空をふちどる空は変わらず
継ぎめの色をこぼしている
文字より速く 指より速く
意思より速く言葉になるもの
おのれより遅い響きを受け入れる


誰かからわたされた波を
足元へ足元へこぼしている
手のひらなのか羽なのか分からずに歩み
はざまをすぎる風と息を知る


指は目を見ず
目は指を見ず
息はひととき 命ではなく
弦はじくもの どこまでも
神の幼さに泣いている


謎や罠や
罰のように
皆そこにあり 空を映し
光や日々や
双子のように
唱いながらすぎてゆく


みどり倒れ
みどり流れる
昇り降りるものから分かれ
ただ地中を飛ぶものとなり
土に横たわる蜜のからだの
もうひとつの鼓動となってゆく



















自由詩 みどり来るみどり Copyright 木立 悟 2008-10-21 11:16:07
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