毬藻
鯨 勇魚

心に栄養価不充分ですから、
あたしは水面に苦しんでいる。

アクリル球体中には、
くるむよに隔てた、優しさがあるのですが。
あたしが生きる為の酸素は、
あなた無しでは流水無きこの場、
居て欲しいにかぎるのです。

あなた、一つ確かである言葉を内面に持ち合わせています。

欲しい。あなたの優しさが欲しいのです。

      ね、あなたと小さなあたし
        一緒になってるのはね
    浮かんだ時に内包してくれるの
      そのまま、ふたり沈むなら
          隠れてしまおうよ

(まあるいね。なでてあげたい。)

少しづつ知る。少しづつ取り込んで。
あたしは夢中であれとつぶやき、
一線を越えてしまうのです。

心から包まれそうです。
恋愛よりも、きっと良いものだから、

(ころん、カラカラ、ころころん。)

沈み込んだ先には暗く、
あなたの悲しみがありました。
知る事で伝えるあたしの為の犠牲。
あなたはあたしの為。
酸素を得ようとするから、
あなただけ苦しんではいけない。
ですから、深層でのふたり、
ひとつに、まあるいのです。
ふたりの声が聞こえて、いる。

お互いを触しながら。

でも、
あなたは怯えてもいる。


海洋と淡水の合流点、澪にて。




自由詩 毬藻 Copyright 鯨 勇魚 2008-10-21 08:20:26
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