営業課長ダントン
木葉 揺

ダントン課長は本来は古いタイプ
事務職の姉さんたちがウルサイから
お茶を自分で入れて飲んだ

ノルマのこなせない私に
容赦なく怒鳴るくせに
飲み会ではセクハラ
帰り際こっそり
「仕事なんて出来んでいい」と囁いた

私はいつも笑っていた
けれどお酒が回ると
力いっぱいの涙
夢の中で何度も
クソダントンに吠えた

病欠が増える・・・
ダントン課長はしかめ面

ある日私は
人事のロベスピエール課長に呼ばれた
「今の仕事量、自分でどう思う?」
コイツはクソダントンの同期!!

力いっぱいの涙
夢の中で
クソダントンと
クソロベスピエールに
まとめて吠えた

晴れて自由の身になった
平日の昼間から飲む
ビジネス街のレストランで
独りでランチのついでに飲む
窓際の席でビルを見上げ
13階にフォークを突き刺す!

フォークの隙間から
紳士の影が
新しくも懐かしい
ガラス越し
口の動きが「ダントンだよ」と言った

何故に相席?とツッコミ逃す
グラスのワインをブッかける気にもならない
解放されたような表情で
「ロベスピエールはクソマジメなんだよ」
そう言って笑いながら
一枚の名刺をテーブルに置いた

「株式会社テルミドール 営業担当 ダントン」
そこには確かに
書類で見た
電話で話した
会社の名前

しばし動けぬ私を置いて
勘定済ませて外に出る
慌てて後を追ったら
ビル群の上には まだ青空がいた
 
「明日、植物園にでも行くか?」
空を見たまま
ダントンさんは言った
私はただ、アスファルトの熱にのぼせた


自由詩 営業課長ダントン Copyright 木葉 揺 2004-08-02 15:37:01
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