海岸通り
藤原有絵

幹線道路を渡ったら
もうペダルを踏まなくても
なだらかに坂を滑り
海に向かう

港町で生まれて
港町で暮らしている

潮風で錆びた自転車のホイール
刻んだ文字
いつかは消える 其れ


絶対だよ!


あんな事
言わなければ良かった

海の無い街で暮らすなんて
信じられない

私は膝に頬をつけ
持て余している感情が
錆びていけばいいと思っている

其れもいつか
消えるかな

まだ
何処にも行けない
私は
足りないものが多すぎて

だから

本当は
すごくすごく
羨ましかった

ちゃんと君が決めたのだもの
素敵だった
もうどんな約束も叶えてくれない君でも
素敵だった







自由詩 海岸通り Copyright 藤原有絵 2008-10-20 00:30:17
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