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カフカ

「人間は皮膚と血管と骨と汚い汁でできているんだよ」
ハシはそう言いながら木の枝で砂いじりを始めた
「それでね、その汚い汁は人間の真っ白なところをだんだん侵食していって、最後は臭くて汚い塊になるんだ」
木の枝で何か複数な模様のようなものを描いたかと思うとそれはたちまち単純な記号に変わった
「その塊が脳ミソや心臓に詰まって僕たちは死んでいくんだ、そうは思わない?」
砂いじりの手を止めてハシが顔をあげた
「もちろん、死んでいくっていうのは寿命が尽きることじゃないよ、心が鉄みたいにガチガチになって動かなくなったり、麻薬中毒者の脳ミソみたいにふにゃふにゃになって溶けてなくなることなんかだよ」
ハシは木の枝を手で弄びはじめた
「通行人やクラスの連中の顔を見たらさ、みんな死んでるんだよね、そう思わない?、きっと汚い汁にみんな汚染されちゃたんだよ、その汁はいつも僕たちの中に潜んでいて、何か大きな波紋みたいなものが空に広がってその汁の活動を活発にしているんだ」
ハシは木の枝を片手でボキっと折った
「その波紋は僕たち人間が作っているんだよ、どうやって作るか知ってる?、簡単だよいろいろなことを想像しなければいいんだ、それだけ。想像のない世界なんて本当の世界の何百分の1の大きさしかないんだ、そうやって狭い世界に閉じ込もって窒息死しているんだよ」
ハシはもう何も持っていなかった。


自由詩 7 Copyright カフカ 2008-10-19 22:55:19
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