ひとつ とどく
木立 悟





生きものの光が震えている
音が 世界を回している
透明のなかの
ひとつの指


夢の終わり
饒舌と雨
とどまることのない
欠けた波


ざわめきは残され
空は空もなくふたたび明るい
底から底を照らす金
常にどこかへ去りつづける鳥


胸をおさえる
轟きと水
追いつづけては
熱を記す指


金属の帆が
海を照らす
文字と蝶は
波の下をゆく


消えかけた数字が描く頬
影の街の道標 熱としるし
鏡の葉を踏み
橋をくぐる


羽が波を補っては沈む
早い星を呑み 隠している
水の上の陽
ふらりと断たれる弧


むらさきを脱ぎ
みどりを脱ぐ
生まれたままの
雨の地の言葉


花と曇の裏側に
ひとつの指の跡がかがやく
光はそよぎ
ここには居ない指にとどく















自由詩 ひとつ とどく Copyright 木立 悟 2008-10-19 14:25:48
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