蜘蛛
寅午

風の強い日
クモの脳裏に観念が降りた日、
クモは木の葉のうえで
円を描くおまじないのあと
糸をのばし、糸を風にのせ
空を高く上ってゆく。

クモは流れる雲のうえで
海をわたり、山脈をこえた。
月の夜、
クモは雲の片隅からスルスルと糸をたらし
遠い、遠い世界の果ての
森のおくにすべりこんだ。

朝、
森の片隅に 七色の宇宙がつくられた。
その重力図を、クモの糸で編まれた宇宙
中心に、クモが太陽のごとく
たくさんの露の玉が、朝日に輝き
太陽を回る惑星のごとく
名も知れぬ蝶が
その重力に力をうしない、捕えられていた。


自由詩 蜘蛛 Copyright 寅午 2008-10-19 12:38:49
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