冷凍保存
1486 106

いつもの河川敷を歩いていたら
昨日まで咲いていたコスモスが枯れていた
僕は君にそう言われるまで
コスモスが咲いていたことさえ気付かなかった

何の気なしに繋いだ君の手は
思っていたよりずっと小さくて
夕暮れのセンチメンタルな空気に
泣きたくなるほどいとおしくなった

この気持ちが死ぬことはないのに
なぜ体の方が先に力尽きてしまうんだろう

例えば二人の体を冷凍保存して
西暦2500年の世界で目覚めたら
今よりずっと永く生きられるかな
今よりずっと一緒にいられるかな
また一つ過ぎ去る季節の中で
そんなことをふと思ったんだ


喪服の集団が列を作っている
灰色の煙が空高く立ちこめる
他人の不幸に心を痛める僕達は
また一つ命のはかなさと尊さを知る

どんなに強く約束を交わしても
未来のことなんて少しも分からない
だから君を不安にさせないために
瞳の中心を見つめながら
伝えたいことはその場で伝えるよ

この気持ちが死ぬことはないのに
なぜ体はこんなにも脆いんだろう

例えば二人の体を冷凍保存して
西暦2500年の世界で目覚めたら
今よりずっと永く生きられるかな
今よりずっと一緒にいられるかな
また一つ過ぎ去る季節の中で
そんなことをふと思ったんだ


共鳴しあう二つの魂が
生まれ変わりまためぐり逢う
そんな神話も素敵だけど
今君と過ごしている時間を大切にしたいんだ
繋がりあった手は離したくないんだ
いつまでも いつまでも

例えば二人の体を冷凍保存して
西暦2500年の世界で目覚めたら
今よりずっと永く生きられるかな
今よりずっと一緒にいられるかな
また一つ過ぎ去る季節の中で
そんなことをふと思ったんだ


自由詩 冷凍保存 Copyright 1486 106 2008-10-14 22:27:26
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