落ちる
霜天

手の届く範囲で
窓を開ける
遠くなった人のことを思いながら
一日を傾ける

窓枠には白い花と
手紙を添えた
白猫が通りすがりに連れて行ってくれる
そんな風景を完成させるため


一日はいちにちでした
落ちても伸びない、跳び上がってもぶつからない


カーテンを閉めて
もう一度開けると
風向きはすっかりと変わっているもので
空は空で、穴の開いた空
平らでもない、丸くもないのに
そうであろうと見せようとする
でこぼこの、穴の開いた
空には落ちてしまうものがあって
零れてしまうものがあって
急いで窓を閉めるけれど
もう、すれ違うように座ってしまった人たちだから
歩いていくしかないようで
零れていくしかないようで
窓を開ける、と
零れてしまって


手の届く範囲で
窓を開ける
届くまでの計算式
確定する、ということのための

手の内側を守るように
抱えるようにして眠る
傾いた一日を閉じる前の
小さな飴を飲み込んで
染み渡っていくその一瞬


繋ぎ止めるには充分な
距離と時間と
空間、だ


自由詩 落ちる Copyright 霜天 2008-10-14 22:23:03
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