『金木犀』
東雲 李葉

金木犀は雨を連れてくる。
別れは突然に訪れる。
幸福は髪の長い球体であると、
そんな話を聞いたことがある。
見つけてすぐに捕まえなくては転がって見えなくなると。
そんな話を信じていた私が愚かなのか。
はたまたそんな話を作った誰かが阿呆なのか。
どちらでも善い。どちらも私の所為である。

金木犀は散ったであろうか。
私はあの香が好きなのに。
半透明な目線を下げれば水の溜りを彩る橙。
秋になったらすぐに空気を捕まえなくては。
喜びは幸運のように私を待ってくれはしない。

雨はまだ当分止まないだろう。


自由詩 『金木犀』 Copyright 東雲 李葉 2008-10-14 16:27:34
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