ソーラーパネル
木屋 亞万

山を歩かなくても
高山植物をいくつも
見つけることができた
お花畑だった
小さな草木が
つける大きな花

青い花が好きだった
眩しいくらい明るい
白や黄の花よりも
吸い込まれるくらい
病的な幽玄の青

柔らかい爪を持つ
花の形が色を引き立て
私の体内の象徴は
青い花に食べられてしまった
花畑、
花畑、
花畑の島、
に私

ある朝、
夢から醒めた
象徴が帰ってきて、いた
花粉に塗れていた
胆嚢の奥で

呼んでいる、
花畑が
私、を

花畑には
一面のソーラーパネル
花畑の島を覆うパネル
花は気候変動に追い詰められ
燃えた
か細く赤茶けた燃え滓、を
無粋に覆うパネル
海に咲く花の島が、
もう、死んだ亀の島

山を歩かなければ、私
粉塗れの象徴を捨てなければ、と
山に登る
が、ヒマラヤは雪に捨てられ
地肌剥き出し、禿げ頭

花畑、
もう、雲の上
塵も届かぬ、雲の上



自由詩 ソーラーパネル Copyright 木屋 亞万 2008-10-11 16:24:21
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