色の無い血溜まり
ホロウ・シカエルボク
疲れの果てにあるはずの
深い眠りが閉ざされた
暗闇で放し飼いの、潜在的な――脅威
カーテンの向こう、いくつもの外壁を反射してくる性急な車のライトが、まるで
取り返しのつかない
観念的なひびのようだ
呼気のわずかな隙間に
何を見たのか
雨に濡れ稼動を止めた
錆び付いた観覧車のような時間、薄明かりに長く、いまひとつの鈍器みたいな影が延びる
雨の音を数えて
雨の音を数えて、稀に見る孤独がそこにあるから
存在と幻影、不完全なレムの中で水と油みたいに分離という調和を描いて
俺は枕に張り付いて無感情に泣いていた
涙は
カラスの糞のように頬をかすめて
朝までには
無意味な気体になる
ワルツのような鼓動
指揮者のタクトの先端が鋭過ぎて
プレイヤー達が微細な傷を受ける、致命傷ではないのに
ひとり残らずなにかを奪われてしまう、夜に降り積もる色の無い雪、それを理由と名付けた、果てしなく刻まれるひび、裂け目のおぞましさに気付くのはきっとあと何度か
渇いた夜が肌を撫でてからさ
血だって言ってよ
血が流れているって
俺にはそれを見つめることは出来ない
近づけば近づくほど
欺かれたような気になる
眠れない暗闇に潜むものは
きっと俺の致命的な配列に更なる配色をもうける
路面には水溜まり
タイヤが通過するたびに
まるで
悲鳴みたいに
弾けては静まる
自由詩
色の無い血溜まり
Copyright
ホロウ・シカエルボク
2008-10-06 23:54:04