不眠
nonya


現実が喉につっかえた夜
時計の秒針は
時を刻まずに
僕のしょっぱい言訳と立場を
チクチクと陰縫いしている

身動きがとれなくなった僕は
掛け布団と
敷き布団の間で
暗闇と同じ色に焦がされて
ギロギロと目を血走らせている

まるで羊の数ほどの
過去のガラクタが連結して
眠りの森を縦横無尽に
切り裂いていく

僕の意識は玄関の
鍵穴をなんなく擦り抜けて
5件先の老犬の安否を
見届けにいく

「さあ朝まで死んだふりしよ」が
母方の祖母の口癖だったが
死んだふりさえ演じ切れない
大根役者の僕は

来る日も来る日も
朝の波打ち際に
ありふれた溺死体となって
打ち上げられるのだ


自由詩 不眠 Copyright nonya 2008-10-06 19:13:32
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