不眠
nonya
現実が喉につっかえた夜
時計の秒針は
時を刻まずに
僕のしょっぱい言訳と立場を
チクチクと陰縫いしている
身動きがとれなくなった僕は
掛け布団と
敷き布団の間で
暗闇と同じ色に焦がされて
ギロギロと目を血走らせている
まるで羊の数ほどの
過去のガラクタが連結して
眠りの森を縦横無尽に
切り裂いていく
僕の意識は玄関の
鍵穴をなんなく擦り抜けて
5件先の老犬の安否を
見届けにいく
「さあ朝まで死んだふりしよ」が
母方の祖母の口癖だったが
死んだふりさえ演じ切れない
大根役者の僕は
来る日も来る日も
朝の波打ち際に
ありふれた溺死体となって
打ち上げられるのだ